環礁の縁を刻む白亜色の石灰岩の庇は、億年にわたるサンゴの骨格が幾重にも積み重なって形成された炭酸塩構造体であり、その天井にはカップコーラルの小さなポリプが隙間なく張り付き、アンバーとクリーム色の岩肌を柔らかく覆っている。庇の陰には半透明な体と銀色の瞳をもつグラッシースウィーパーの群れが幾層にも重なって静止し、遠い水面から降り注ぐ環境光だけを受けてかすかに輝いている。庇の縁と外壁には枝状のハードコーラルやゴルゴニアンが緩やかな流れに揺れ、イソギンチャクとクマノミの小さな共生が岩の窪みに宿る一方、色鮮やかなブダイが外礁の明るい岩盤を音もなく通り過ぎる。水面の波紋が砕いた熱帯の陽光はコースティクスの文様となって礁斜面を滑り落ち、ターコイズからコバルトへと深みを増す水柱の中に細かな懸濁粒子を浮かび上がらせながら、この炭酸塩の宮殿が人の目など必要とせずにただ在り続けてきた無音の時間を映し出している。