珊瑚の迷宮
陽光の表層水

珊瑚の迷宮

熱帯の浅瀬に広がるサンゴの迷宮では、隆起したサンゴ礁の尾根と白砂の溝が交互に連なり、沖合の青へと静かに延びている。水深わずか数メートルから数十メートルのこの真光層では、太陽光がほぼ減衰することなく海中へ降り注ぎ、波面を透過した光が揺れる水面の形をそのまま映しながら、コースティクスの格子模様をサンゴ骨格と白砂の上に織りなす。枝状サンゴ、テーブル状のエダサンゴ、ドーム型の塊状サンゴが折り重なるように群生し、その隙間でクロミスの小さな群れが青緑色の光を瞬かせながら漂い、水柱に浮遊する微細な粒子が環境光を受けてかすかに輝く。熱帯の透明度が極めて高い海水のなかで、水温は日射により表層が温められる一方、沖へ向かう砂溝の奥はしだいに濃いコバルトブルーへと沈んでゆき、礁棚の縁で外洋の深みへと続く世界の入り口を予感させる。ここには観察者も記録者も存在せず、光と生命と石灰岩の構造物だけが、何万年もかけて積み重ねられた静寂のなかで今も息づいている。

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